アメリカは多民族国家です。各民族のさまざまな価値観が衝突します。そこでは複雑な利害関係が生じ、論理的に説得できなければ組織を動かすことができないという事情があり、これがアメリカでいち早くロジカルシンキングが誕生した理由です。アメリカの大学院でのMBA (経営学修士) の履修科目がロジカルシンキングであり、日本企業の経営陣でもこのMBA取得者が増加してきました。
日本は単一民族国家というわけではありませんが、言語はほぼ単一で島国のため同族意識が強く、企業では終身雇用、年功序列制度が長く続いてきました。組織の構成員がつねに同じ顔ぶれで変化がないため、上下関係が意思決定の根拠となることも少なくありません。日本の社会では、ものごとを論理的に説明する必要性が感じられていなかったのです。
ところが、経済のグローバル化(経済のアメリカナイズ)により、海外での企業活動や日本国内でも外国人社員とのコミュニケーションにおいて、ロジカルシンキングは欠かせないものになってきました。
また、日本の若者の意識の変化もあります。アンケート調査では20代のビジネスパーソンの中に、「仕事の意味や手順を具体的に説明されなければやらない」という考え方が増えてきています。組織の目標、個人の目標というものを論理的に話し、「だから君のやるべきことはこれだ」と説明する必要が出てきました。「そんなこと言わなくてもわかるだろう」という態度はもはや通用しません。
MBA取得者である経営陣は、このような変化を敏感に感じ取っています。ロジカルシンキングの基本となる構造把握の能力に長けた人物を、現代の企業は求めているといえます。これが新テスト『構造的把握力検査』のもつ重要な意味なのです